マイナスのプロモーション

こまかい時間が余ったので、ひさびさにブログを書く。というか、最近、リアルが充実していて、ネットに対する興味が薄れていて嬉しい。

このまま、ネットを卒業できれば人生の時間をだいぶ有効に使えそうだ。


さて、最近の僕が師事しているマーケティングの先生がよくいう言葉に「それはマイナスのプロモーションだ」というのがある。
お客さんが来なくなるように一生懸命に宣伝をしている、宣伝すれば宣伝するほどマイナスの効果にしかならない、というのだ。


もうすこし具体的な例でかうとマーケットとして狙うユーザ層を絞り込んだほうがいい。記事に取り上げてもらっても、いろいろな作品の中で、少ないスペースで紹介されても、注目すべきではない作品だという見え方になるから、行きたいなんて思わなくて無意味、とかいったりする。


まあ、このこと自体にはみなさんもなんとなくはそうだろうなと納得するひとが多いと思う。でも、実際、担当者だとしたら、やらないほうがましといわれてもなにもやらないよりはましなんじゃないかと思ってしまうひとが大半なんじゃないだろうか。


このすれ違いをどう考えたらいいんだろ、そもそもマイナスのプロモーションとはなんなのだろ、もうちょっと定性的・定量的な説明をできないものかと、つらつら考えてみた。


まあ、よさそうな説明が思いついたので書いてみる。


まず単体の宣伝そのものをとりだしてみれば、マイナスのプロモーションというのを見つけるのは意外と難しい。やらないよりはまし、といったものが大半だろう。
売上に対して、すくなくともプラスの効果はあるだろうと思う企画じゃないとさすがにリソースさいてプロモーションの努力をかけたりしない。


でも、それだけだったら、ただの効果の少ないプロモーションというだけだ。なぜ、それがマイナスのプロモーションだと断ぜられるのか。


というわけで、個人的に使っているユーザのカテゴライズを紹介する。


僕はマーケティングするときに脳内で、いろいろ、いいかげんな数理モデルをつくるのだが、基本的には他人にしゃべったりしない。
別に内緒にしているわけじゃなくて、我流なモデルなので共通言語としてコミュニケーションに適切じゃないと思っているのと、そのモデルが適用可能かはケースバイケースで慎重に見極める必要があるのに、一人歩きして勝手に社内で絶対的な法則として使われそうでイヤだからだ。


ぼくがプロモーションするときにはユーザを以下の4つに分類して数理モデルを考えていることが多い。


X. プロモーションする対象のサービス


A. 最大限のマーケットの大きさ。つまりは全体でターゲットになるユーザが何人いるか。
B. Xをしらないユーザ
C. Xをしっているユーザ
D. Xをしっていて興味をもたなかったユーザ


当然ながら、A=B+C+Dとなる。そして僕はプロモーションをするときにB,C,Dの比率がそれによってどう変化するかを考える。
特に長期的な戦略を考える場合には重要視するモデルだ。
このモデルのパラメータに実際にユーザになった数がはいっていないのも、僕的には重要なポイントだが、まあいい。あとで説明する。


で、この場合のプロモーションでベストな基本戦略は以下のとおりだ。


戦略1. Bはできるだけ減らさない。
戦略2. Bが減った分、CとDが増えるが、できるだけCを増やして、Dは増えないようにする。


↑これが効果のないプロモーションはマイナスのプロモーションになる理由だ。


戦略1については補足が必要だろう。サービスをしらないユーザが減らないほうがいいというのは、プロモーションをしないほうがいいともとれる。もちろん、これはそういう意味じゃない。戦略1をより正確にいいかえると、なにもサービスを知らないユーザが、はじめて情報に接するときに、このサービスは自分は関係ないし興味ないという結論が出るぐらいだったら、なにも知らないでいてくれたほうがましだ、ということだ。


さっきのB,C,Dというユーザの分類でいうと、実際にサービスを購入してくれる可能性は、C > B >> Dという順番になる。まだ、なにも知らないユーザはうまく情報を渡せば、見込み客になる可能性があるが、いったん、このサービスは知っている、自分には関係ないと思いこんだユーザを見込み客にするのはきわめて難しい。


だから、安易に効果のないプロモーションをやればやるほど、Dのユーザを増やしてしまい、将来的なビジネスチャンスがどんどん少なくなってしまうのだ。効果のないプロモーションだとユーザリーチが大きければ大きいほど将来的なビジネスチャンスが減っていくわけだ。


極端な例をあげるとSPAMメールがあげられる。バイアグラの購入をすすめたり、お金をもらって人妻とエッチできるみたいなSPAMメールは、ふつうの人間同士で送りあっているメールよりも遥かに多くネットを飛び交っている。昔は騙されるひとも多かっただろうし、とても儲かったんだろう。しかし、ネットが普及して10年以上もたつ現在は、もはや騙されるひとなんてほとんどいない。しかし、100万通に数人でも騙されるひとがいるならば、1億通送れば数百人を騙せるからもっと送ろう、みたいなロジックで一向にSPAMメールは減らない。そしてますます騙されるひとがすくなくなっていくという状況がある。効果のないプロモーションというのはこれに似ている。


さて、ここまでプロモーションにおいてA=B+C+Dという関係がどういうように変化するかが重要だといっていたが、実際の売上をたてるには、当然、サービスを知っているだけではだめで、購入させなければいけない。このことをどう考えればいいのだろうか。


僕の考えではマーケティングを2つのプロセスに分解するとわかりやすい。ブランディングとマネタイズだ。
A=B+C+Dという関係式で各要素がどう変化するかは、実はブランディングの結果を表している。


マネタイズはCのサービスを知っているユーザのうち、どれぐらいの割合で購入者に変換できるかであると考える。よくマーケティング考えるときにブランド戦略も大事だというひとは多いが、頭の中で、じゃあ、どうやって優先度を決めていいかの基準がはっきりしないケースが多い。その場合にはブランディングとマネタイズの両面からなんらかの施策による影響を予測して判断すればわかりやすいだろう。


さて、マネタイズにおいてはプロモーションの効果とは別に、価格やサービス内容によって決まる「購入者と非購入者の間の化学平衡」みたいな関係が成立していると考えるといろいろと分かりやすいというのが僕の考えだが、今回のテーマからだいぶ外れてきたのでここで終わることにする。