本当に世界的なwebサービスをつくりたいなら日本にいるべきと思う理由

世の中には、頭のいいひとたちがつくりあげる先進的な考え方といったものがあります。

そして、IT業界においては、先進的な考え方は常に米国からやってくることになっています。
米国でおこっている出来事を把握して解説することが、頭のいいひとたちの得意とするところです。


そんな頭のいいひとたちは話の受け売りをするだけではなくて、具体的な提案みたいなのもたまには出すのですが、そのひとつには、「論理的な帰結として、日本が世界で勝つためには英語版のwebサービスをつくらなくてはいけなくて、米国でまず最初に成功しないといけない」というのがあるようです。


……。まあ、おおむね正しいとしましょう。


で、じゃあ、具体的にどうすんだ?と。なにが差別化ポイントなのか?というとこれがない。
まあ、なんらかのサービスのすてきなアイデアがあってそれで勝負ということなんですが、それってじつはすごく現実をなめている話なんです。


米国人だってバカじゃないんだからすてきなアイデアは米国人だって思いつくわけです。すてきなビジネスアイデアを思いついた日本人が米国で起業するというのと、同じようなすてきなビジネスアイデアを思いついた米国人と、どっちが成功確率高いでしょうか?


米国人でも成功確率低いギャンブルにハンデキャップを背負って真っ向から参戦するわけだから、そのままでは勝てるわけがありません。日本人だからこそ、そのギャンブルに参戦して有利なポイントというのがなければいけないはずです。現実にはそういうのなしに、言語的、文化的なハンデキャップとかだけを背負って戦っているわけです。勝てるわけがない。

実際、語学で苦労しているようなブログとか見るんですが、米国進出の名目で、語学留学してるだけなんじゃないのか?とか思います。


これがどれぐらいありえないことなのか、ちょっと逆の視点で考えてみましょう。


日本のサブカルチャー好きなシンガポールの若者が、ライトノベル作家になりたいと日本にやってきたとしたらどうでしょうか?もちろん日本語は片言程度しかつかえません。で、どんなライトノベルを書きたいのかというと、やっぱり王道の学園コメディだといっているとします。


まず、そのガッツを褒め称えるとして、そのほかには、どう思いますか?成功するイメージは湧くでしょうか?


挑戦することに意味があるとして、米国で起業しようとするのは、これとだいたい似たようなものだと思います。


米国で起業するのであれば、日本人であることを強みに変えないとだめでしょう。その点、はなから、米国でビジネスをするのではなく、日本と米国の情報ギャップを利用して日米間でコンサルタント、中間業者として、うま味を吸おうとしているひとたちのほうが圧倒的に正しい。まじめにネットサービスを米国で立ち上げようというのは、踊らされているだけです。


本場の米国にいってガチで成功をめざすには、結局、米国人になるしかない。それでもやっと対等の場にたてるだけです。


ぼくは米国で成功するwebサービスは日本でつくるべきだと思っています。


世界に通用した日本のものって、結局、日本で流行ったモノです。アーケードゲームしかり、コンソールゲームしかり、カラオケ、アニメ、マンガ、家電、自動車。すべて国内に市場があり、そこで日本独自の進化をしたものが、気がついたら国際競争力をもっていて海外でも挑戦できたのです。


日本人が世界にwebサービスをもっていきたいなら、日本独自のものをつくらないといけない。それはたんなる脳内にあるすてきなアイデアレベルじゃだめなのです。アイデアだけで米国で成功できるなら、それは米国人がやれたはずです。それは日本のカルチャー、ユーザー、マーケットによって支えられたあるノウハウの集大成でなければなりません。


もちろん、それは海外のアイデアをそのままもってきただけのものじゃ、逆輸出はできません。日本独自の進化をとげたものでなくてはならず、海外の動向はもちろんウォッチしなければいけませんが、それは真似るためじゃなくて、違うことをやるためです。


携帯コンテンツの有力プレイヤーが、初期に海外進出をしていましたが、彼らの戦略は単純でした。先行メリットを海外でも追求する、ということです。ようするに先にやる以外に競争力とよべる点をもっていなかったわけです。もちろん結果は惨敗でした。


ぼくは日本のwebサービスは世界に遅れているというよりは、まだまだ独自進化が足らないと思っています。そして、足らないながらも、世界の中では珍しく、独自進化をできるかもしれない国だと思います。


いつか、これは一朝一夕では真似できない日本固有の強力なwebサービス群があらわれるとき、あらためて世界へうってでるチャンスが訪れるでしょう。遠回りのようですが、日本固有の世界の流れを無視したへんてこなwebサービスの進化が、世界への最短コースであるとぼくは信じています。

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