潜在限界会員数についての補足

今回は事務的でつまらなそうなタイトルにしてみた。


前々回のエントリで紹介した潜在限界会員数についての補足である。補足なのでとくに一貫性のないいくつかの説明の羅列でしかない。


なので潜在限界会員数を月間入会者数と当月退会率と継月退会率で求めるという手法に興味あるひと以外は面白くないエントリなので関係ないひとはいますぐまわれ右をすることをお薦めする。


□ 潜在限界会員数の典型的な動きについて


会員数はいずれ潜在限界会員数に収束していくという話をしたが、実は潜在限界会員数は結構変化する。とくにサイトをつくってしばらくの間は次第に増加していく傾向がある。これは継月退会率は変化しないという前提が実はちょっと正しくないためだ。ひとつは最初の月の退会率がだんとうに多いのは間違いないのだが、2ヶ月目の退会率も1ヶ月目よりも低いが、3ヶ月目よりは高くなるからだ。また3ヶ月目以降の退化率も非アクティブ会員がどうしても増えていくので退会率は次第に下がっていく傾向をもつ。したがって継月退会率はサイトをつくって1年間はまず下がっていくので潜在限界会員数は増えていくことになる。
また、入会者数と退会率はサイトのプロモーションやサービスの充実により、とくにサイトをつくった初期は大きく変動する。いったんこれらの数値が安定しはじめると、数値を変化させることはとても難しくなるので、最初の数ヶ月は本当に大事だ。


□ 月間入会者数は本当に安定するか?


ブコメに累計の入会者数が増えていったらマーケットが飽和するので、月間入会者数は一定じゃなくだんだんと減るんじゃないかという疑問があった。残念ながら、実際は月間入会者数はだいたい一定になる。当初は伸びてすぐ飽和して大きく減少するような入会者数の推移をするのは単品のゲームなどのコンテンツとしての性質の強い、つまりひとつのコンテンツとして消費されやるいタイプのサイトの場合だ。サービス的なサイトの場合、たとえばゲームサイトでも毎月コンテンツが増えるミニゲームサイトなんかの場合は、入会者数や退会率はやはり一定値をとる。これはジャンル自体が飽きられるとか、プラットホームの普及台数が大きく落ち込むとか、超強力な競合サイトがあらわれるとか、そのサイトのファンダメンタルが変化しない限りは、一定の値になる。


□ 潜在限界会員数が伸びなくなったときとはどういう状態か?


サイトをしばらく運営しているとどうやっても月間入会者数、当月退会率、継月退会率のすべてが安定して変化しなくなる。つまりは潜在限界会員数も一定になる。従来通りのプロモーションやサイトの改良などの施策をいくらやってもあまり効果がなくなる。こういう状態をどう考えればいいかだが、ぼくはサイトがリーチ可能なユーザのすべてにほぼ知名度がゆきわたった状態であると思っている。つまりユーザ全員がこのサイトがどんなものなのか”知ってしまった”ということだ。どういうふうに知られてしまったかで、マーケット対象のユーザのどれぐらいの割合が会員になってくれるかが決まるわけだ。だから、会員ビジネスをやる場合は、顧客である会員の満足度だけじゃなく、いちどの顧客になったことのないユーザにどういうイメージを持ってもらうかというのが非常に重要だ。だから、認知を上げるためのプロモーションを安易にやってはいけない。下手に強力なプロモーションをつまらない中身でやってしまうと、未来の顧客を大きく失うことになる。サイトの将来性に自信はあるけど、今のサービスじゃまだそこまで到達していないような場合は、プロモーションをどこまで我慢するかというのは長期的な戦略では大切だ。ユーザ全員になんらかのイメージをもたれてしまった場合にそれを塗り替えるのはとても大変だ。それは要するにユーザの認識を相転移させるということだ。つまり、ユーザ全員にもういちど新しいイメージをすりこむということだ。そういうサイトを大ヒットさせる難易度は最初の白紙のユーザに新しいイメージが浸透させて大ヒットさせるよりも難しい。


□ プロモーションやサイトの改良により退会率への影響


プロモーションすると入会者は増えるが退会率も増大する可能性がある。なぜならプロモーションにより、退会するのを忘れていた既存ユーザが退会することを思い出してしまうからだ。なので非アクティブな会員がどのくらいいるかを把握することは大事だ。これらは新しいことをトライするときにみかけの上での障害になる。なにをやっても会員が減ってしまうのだ。まあ、でもそうして非アクティブ会員を減らすほうがぼくは健全だと思うのだが、中途半端にやるなら、なにもやらないほうがましというケースは古いサイトの場合に多い。


□ テレビCMの効用


テレビCMをうつと入会者も増えるし、退会者も上記の理由で増える。しかし、継月退会率は下がる効用がある。これはサイトの信用度が増すからだ。既存会員が自分の入会しているサイトのことを再評価するからだ。やればやるほど効果がでるものではないが、ある程度の会員数がすでにいる場合はけっこう重要なボーナスだ。


以上