かわんご回顧録 ドワクエ戦記その4 テロとの戦い

農耕生活の開始


第一次許昌大戦はドワクエ、土佐の双方に深い傷跡を残しており、かろうじて両者とも同盟ランキングの1、2位を占めているもの攻撃ポイントと防御ポイントがその理由であって、国力では双方とも10位ぐらいの同盟に転落していた。


ドワクエの各同盟員は内政の充実に力を注ぐこととなり、同盟プロフィールでも元の平和を愛する農耕民族に戻ることを宣言し、ヤサイを主に栽培するサイヤ人であると名乗った。


ドワクエ同盟は先の大戦で発揮した組織力をみせつけ、たちまちのうちに内政でもランキングのトップにかえりざき、同盟ランキングも土佐を抜いてトップに立ち、さらに差を広げていった。土佐も同様に急激に国力を回復していき、結局、ドワクエと土佐が他同盟よりも頭ひとつぬけだし、トップを争う形となった。大戦による共倒れを期待した他同盟の思惑は外れ、第9サーバの今後が、ドワクエと土佐を中心に回っていくことが明白になってきた。


土佐との差を広げていくドワクエに対して、土佐は魏武と合併することで対抗し、同盟ランキング一位を奪還した。魏武は先の大戦でドワクエの開戦のきっかけとなる領土紛争をおこしながら、戦争自体ではほとんど活躍しなかったことにより土佐への発言力が低下していたらしく、主導権を土佐が持つ形での合併となった。ただ、土佐内部で元魏武の同盟員の発言力は維持されており、対ドワクエとの外交方針を内部統一することがますます難しくなったようだ。

100枚目の奇跡


カードバトルもまた激しさを増していた。


かわんご:「戦争終わると金かかるよねー」


Dailol:「戦争中はブショーダスひく暇ないからねー。全然お金つかわない」


ふつうは逆でブラウザ三国志はふだんは課金しないユーザも戦争になると相手に負けないためについ課金してしまうという設計になっている。ところがドワクエの主力メンバーは平和になるとひまなのでついついブショーダスをひいてしまうから平和時のほうがお金がかかるのだ。


Dailol:「ひとつ気になることがあるんだけど、俺のひいたRとSRのカードのうち半分は100枚目なんだよね」


ブラウザ三国志でひとりのプレイヤーが持てる武将カードの上限は100枚である。ちょうど100枚になってこれ以上はカードをひけないというときにレアカードが出やすいというのだ。


早速、他のプレイヤーも本当かどうかを試し始め、実際に100枚目でRやSRをひいたという報告が続出する。ちなみにこの仕様についてもワンナップは存在を否定しているが、われわれは信じていない。おそらく最後の1枚に大当たりをだすことでユーザの課金モチベーションを維持させることを狙った仕様じゃないかと推測している。ただし、この現象は1月中旬のメンテ以降は発生しなくなったので、そのときにこの仕様は削除されたと思われる。


メンテといえばメンテ明けにはカードの出が悪いという噂もあった。おそらくパチンコ台をモデルにした難易度設定みたいなものがあるんじゃないかとわれわれは予想している。まあ、本当にそういうのがあるのかどうかワンナップは否定しているのでさだかではないが、アイテム課金型のゲームにおいてそういう”出玉”の調整は、実際に売り上げに直結できる機能なので、課金収入をコントロールする手段として存在していてもおかしくない。


たとえばCPの増量キャンペーンをおこなったところで、難易度を高めに調整することで実際にはレアカードの供給を増やさずに売り上げを増やすことも可能だろう。将来的にアイテム課金型のゲームでの”ガチャガチャ”とかでその透明性が問題性になる可能性はあると思う。


ブラウザ三国志ではその難易度調整のための仕組みで利用可能そうなブラックボックスが非常に多く設計されている。たとえば武将合成のときの成功確率である。合成素材として武将カードを生け贄にすることで合成確率があがることとどれだけ確率があがるかについては公開されているのだが、かんじんの基本の成功確率がわからない。おそらくここをときどき変更しているのは間違いない。


ただ、こういう確率を全部公開することを要求すればいいかというとそれもちがっていて、ダビスタとかでも証明されているようにゲーム性を考えた場合には、いろいろなパラメータが隠されているほうが面白いことも多い。さらにブラウザ三国志のような多人数対戦ゲームの場合はリアルタイムなバランス調整はゲームの面白さを保つには必須だろうから、ある程度そこのコントロールを目に見えない形で運営側に委ねた現在のやりかたは正解じゃないかと思う。まあ、でも、ときどき、むかつくのはいたしかたない。


1月中旬のメンテではおそらくこの基本の合成確率もいじられたらしく、従来ほとんど成功していた低レベルでのスキルのレベルアップの失敗確率がいきなり増えた。(もちろんワンナップはこれも否定)だぶついた武将カードの流通量を減らそうとしたのじゃないかと思う。これは相当評判悪かったのだが、しばらくしたら元に戻っていた。


だいぶ話が脱線したが、そういうわけで土佐との戦いのあと1ヶ月以上、戦いのない平和な時期がつづき、その間はずっとみんなでブショーダスをひきつづけていたということだ。


さて、大戦のあとドワクエは土佐と外交交渉を何度も行った。ドワクエと土佐の大連立で第9サーバの天下統一をめざそうという誘いである。


土佐は、ドワクエ、土佐以外の同盟が大連合を組んで両者が標的となってつぶされる可能性があるとして、秘密同盟を結ぶことを提案した。


さらに3位のssbbにも声をかけて、ドワクエ、土佐とssbbの秘密同盟が結成された。しかしながら、土佐内部の意見の不一致もあり、このドワクエと土佐の秘密同盟は非常に不安定な要素をはらんでおり、ときには一触即発の危機もありつつ、実際にはドワクエと土佐は同盟ランキングと制圧ランキングでお互い激しいトップ争いをつづける半ば冷戦のような同盟関係がつづくことになる。


第9サーバのレベルがいかに他のサーバよりも高かったかというと、まず、武将カードの相場の暴落である。ブラウザ三国志は余った武将カードをユーザ間でオークションで売買できるという機能があるが、武将カードの取引相場が第9サーバだけ他サーバの半額近くまで下がっているというのが話題になった。ドワクエ同盟があまりに武将カードをひきすぎるので、いらないからオークションに出品される武将カードが大量にだぶついて相場が暴落したのである。


通貨の供給量が一定で、商品の供給が増えるとデフレになって価格がさがる。まさに経済学の法則どおりだった。


ちなみにゲーム終盤には逆の現象がおこって、むしろ第9サーバのほうが他サーバよりも特にR, SRカードについて相場が高くなっている。これについてはひょっとするとブラウザ三国志通貨供給量の動的な調整をおこなっているんじゃないかなと思っている。ブラウザ三国志ではTPはクエストやNPC拠点の陥落時のボーナスなど供給されるところが割合固定されていてサーバごとであんまり変わるとは思えない。で、なんとなくだが、ちょっとトレードが成立するためにはこれだけではTPの通貨としての供給量が不足しているように思う。ぼくの予想では日銀の買いオペと同じようなことでTPを供給しているのではないかと思っている。つまり、トレードで出品されたカードのかなりの部分は運営が買っているんじゃないか。


あと、URとかSRの新しいカードが追加されたときにすぐさまオークションに出品しているのは運営じゃないかという疑惑をもっている。他のプレイヤーがすでにもっているということを見せて購買欲を煽っているのではないか?


また、ドワクエと土佐の同盟の拡大速度も異常で、ゲーム終了1ヶ月前の両者の同盟ポイントがゲームがすでに終了した他サーバの一位同盟よりも高い、とかいう現象がおこった。ブラウザ三国志の歴史上最大の同盟の1位と2位が両方第9サーバに存在することとなったのである。

War against Terrorism


拡大をつづけるドワクエと土佐、とくにドワクエに対しての反発が広がっていた。年末の休暇にはいるまえ単独プレイヤーが盟主かわんごの本拠地をめがけて長駆攻撃をしかけていたというテロ行為も発生した。他でもドワクエへのテロ行為というかいやがらせのような事件がいくつか発生していた。


ドワクエはそこで年が明けた2010年の活動テーマをテロとの戦いと位置づけ、精神的指導者をブッシュ元米国大統領であると宣言した。


ただ、テロ行為は元の同盟を離れて単独でおこなうことが多い。おそらくは複アカウントでおこなっている例も多いだろう。なのでテロ行為の黒幕をつきとめることは非常に難しい。


そこでわれわれは精神的指導者であるブッシュ元大統領のテロとの戦いかたを参考にしていくつかの方針を決めることにした。


・ 石油のような資源をもっているところはテロ組織として認定されやすいことをブラウザ三国志にあてはめると、われわれが欲しいNPC城をもっている同盟はテロ組織の有力候補であるという見分け方になるということを発見した。たいへんに分かりやすく実用的なテロ組織の判別法だ。


・ テロ組織は大量破壊兵器をもっている疑いがある。怪しい同盟は大量破壊兵器の捜索を理由に攻撃していい。捜索の結果、大量破壊兵器が見つからなくても問題はない。


ドワクエの友好同盟のいくつかから情報として、反ドワクエ連合を結成しようとしている黒幕はm-SRFVだというのが寄せられる。また、m-SRFVは建業をあっちこっち同盟といっしょに確保していた。テロ組織の認定条件は十分だ。また、あっちこっち同盟は年末に盟主かわんごに攻め込んだテロ同盟がもともと所属していた同盟でもあった。


ドワクエ同盟が最初に狙うNPC城は孫権の建業と決まった。


ドワクエと土佐の秘密同盟により、土佐も協力して参戦することが決まった。


こうして第9サーバの第一期において、最大の激戦となり、また、多くの友情が生まれた建業攻防戦がはじまったのである。m-SRFVは当時土佐、ドワクエに続く3番目に強力な同盟だった。この戦いの結果、m-SRFVとあっちこっち同盟は事実上消滅することとなり、もはやドワクエと土佐に対抗できる勢力は第9サーバからは消えた。ドワクエが総力戦をおこなったのも対m-SRFV戦が最後であり、以後のドワクエのおこなった戦争は総力戦というよりは一方的な蹂躙に近いものばかりであった。


ともあれ、そうしてはじまったドワクエ対m-SRFVの戦いは熾烈を極めた。